2023年に改正された空家対策推進特措法。管理不十分な空き家も土地の固定資産税が最大6倍に?!
2024.05.30
そのまま放置すれば倒壊等のおそれがある状態の空き家「特定空家」に加え、窓や壁が破損しているなどして管理が不十分な状態の場合、「管理不全空き家」に指定され、自治体からの指導に従わず勧告を受けると、固定資産税が最大で6倍になる改正法が施行されました。
いま空き家所有者がすべきこととは?空き家問題の解消を加速させるために、この2023年12月に施行された改正「空家等対策の推進に関する特別措置法」について、ポイントを絞って解説します。
空家対策特別措置法は、全国的な空き家増に伴う問題の深刻化を受け、空き家対策や再生活用を推進するために制定されました。
この法律は、適切な管理がされておらず周囲に悪影響を及ぼしている空き家を「特定空家等」と呼び、自治体が所有者に指導や勧告、命令を行えるようにしました。
自治体から「特定空家等」に認定され勧告を受けると、「住宅用地特例」という税の軽減措置が外され、土地の固定資産税が最大6倍になってしまいます。さらに命令に違反すると50万円以下の過料に処される場合があり、最終的には空き家が自治体によって強制処分され、その費用が所有者に請求されます。
にあると認められる空家等のこと。(出典:空家等対策の推進に関する特別措置法)
このように特定空家について厳しい規定のある空家対策特別措置法ですが、特定空家になってからの対応には限界があるとして法改正がなされ、次のような内容が追加されました。
放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家を「管理不全空家等」と定め、自治体が指導や勧告を行えるようにしました。そして自治体からの指導に従わず勧告を受けると、「住宅用地特例」が解除されるようになりました。つまり、「特定空家等」だけでなく「管理不全空家等」も、土地の固定資産税が最大6倍になってしまう可能性があります。
など、放置すれば「特定空家等」になる恐れがある空家等のこと。
(出典:国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」より編集部まとめ)
図1:法改定について(出典:国土交通省「空き家対策ってなに?」より抜粋)
従来は、空き家を活用あるいは建て替えたくても、用途規制や建物の接道義務など、建築基準法等の規定にはばまれて実行できないケースが多々ありました。今回の改正では、自治体が規制を合理化し空き家の用途変更や建て替えを促すことのできる制度ができました。
緊急性が高い場合には命令の手続きを経ずとも行政代執行が可能となる等、自治体がより迅速な対応を行えるようにしました。
空き家は時間が経つほど問題が複雑になります。売れづらくなる、様々な税優遇が受けられなくなる、劣化が進み解体や改修のコストが増える等、金銭面でもリスクが増大していきます。今回の法改正によって、空き家のまま所有し続けるリスクはより高まったと言えるでしょう。
こうした状況下では、空き家を「とりあえず」所有することをやめ、所有する目的を明確にすることが大切です。本格的に困る前や空き家を相続する前から家族・関係者間で話し合い、動き出すことをおすすめします。もちろん既に困難な状態に陥っている場合でも、対応は早ければ早いほど良いでしょう。
とはいえ、法規や税、権利関係、売却や賃貸の検討など、空き家をとりまく複雑な諸事情に自ら対応するのは難しいもの。適切な解決方法も、空き家や所有者の状況によって千差万別です。そのような時は抱え込まずに相談窓口や専門家を頼り、所有する目的や個別の解決方法を一緒に見つけていくことが有効です。